憧れのグランドキャニオン国立公園に行ってきました。絶景写真とともに、ブライトエンジェルトレイルで起こった大事件を聞いてください。
グランドキャニオンで事件が起こりました。
登山好きな私たち。
グランドキャニオンには車で行ける展望台の他にもトレッキングコースがあるので、時間の許す限りトレッキングを楽しもうと考えていました。
いくつかあるコースの中で選んだのは「ブライトエンジェルトレイル」。
展望台からスタートするこのコースは、普通の山登りと違って最初に下ります。
コロラド川が流れる谷底まで行けるのですが、なんせ高低差があり距離が長いので、早朝に出発しても帰りの登り道を行く頃には太陽が昇ってかなり暑く、体調を崩す人も多いみたい。注意を促す看板もありました。
少し下るだけでも見え方が変わるグランドキャニオン。
登ってくる人達と挨拶を交わしながら、25分ほど下りました。
あまり時間がなかったのと、下りに飽きてきた(笑)ので引き返すことに。
日が暮れるまでに、次の目的地であるアンテロープがある町「ページ」へ辿り着くべく、早足でガンガン登ります。
登山口まであと10分で着くという所でのこと。
何故だか人だかりができていました。
☝︎実際の場所ではないけれど、ちょうど崖の影になっているところで、所々雪も残っているこんな場所です。
近づいてみると…おじさんが倒れていました。
私達の2組ほど前を歩いていた方です。
仰向けで、時折苦しそうなうめき声をあげています。
周りには5人ほど人がいて、心臓マッサージを始めているところでした。
あまりに衝撃的な場面に固まってしまう私。
何をしていいのか、近づいていいのかもわかりません。
細い崖道だったので、登山客は行き交うこともできずにどんどん溜まっていきます。下る側、登る側、どちらの人達も足を止め、無事助かることを祈っているようでした。
周りにいた女性が頭を支えて気道確保し、男性2人が交互に心臓マッサージを続けます。
そのうち登山口の方からAEDを持って駆け下りてきた人が到着しました。
倒れた男性のシャツを脱がして胸にAEDを装着。
さっきまでは苦しそうながら声を上げていたものの、全く反応がなくなっています。
どうやら心肺停止している様子。
AEDから「電気ショックを行います、離れてください」というメッセージが流れ、ウゥーーという大きな警告音の後、バンッ!と男性の身体が浮きました。
それでも意識は戻らずまた心臓マッサージ。
そうこうしてるうちに救急隊員さんが到着しました。
でもまだ意識はありません。
と同時に、1人の若い女性が登山口の方から駆け寄ってきたかと思ったら、いきなり泣き崩れました。
男性の娘さんです。
もうゴールに近かったから先に戻っていたところ、離れたすぐ後にお父さんが倒れてしまったという状況のようでした。パニックでフラフラしています。
私もよく両親と旅行に行くので、自分に置き換えたら…と思うと涙が出そうでした。
目の前で倒れている父親に電気ショックを流すなんて、仕方ないにせよ、堪え難いことだと思います。
でも3回目くらい電気ショックをした後のこと。
なんと意識が戻った!!!
でも当然、予断を許さない状況。
救急隊の1人が周りにいた登山客に向かって叫びました。
「彼の体を冷やさないようにしないといけないので、可能な方はジャケットなど貸してください!」
これを聞いて、みんなゴソゴソとリュックの中からブランケットを出したり、脱いでいたダウンコートを提供したり。
私も何か出したかったのですが、ただでさえ寒い山影にずっといたので冷え切っており、自分まで体調を崩して迷惑は掛けられないな、どうしよう…
なんて考えてふと横を見ると、
さっきまで隣にいたヨシキがいなくなってる。
前方を見ると、ものすごい勢いでウインドブレーカーを脱ぎながら男性の方へ走って行ってました。
そう、こんな時、後先考えずに人助けをするのがうちの旦那のいいところであり恐ろしいところなのです。笑
私の隣に帰ってきた彼は、薄いインナー1枚だけの状態でした。
☟コレです
雪の残る渓谷に似つかわしくない、パタゴニアのキャプリーン姿。
あまりのペラッペラさに、不謹慎にも少し笑ってしまうほど。
🙋♀️「え?全部提供したの?笑」
🙋♂️「もちろん。その方がちょっとでもあったまるかなと思って。でもポケットからサングラス出すの忘れてた」
(上の写真のサングラス🕶 つい1週間前にカンクンで購入したものです。泣)
そう言いながら既に鳥肌が立ってます。肩も上がって猫背だし。
可哀想なので私のウインドブレーカーを着せてあげることに。
救急メンバーが8名揃い、担架も到着。
みんなが提供した防寒具で包んだままの男性を分厚い寝袋に入れて、車輪付きの担架に乗せました。
左右4人ずつで崖道を登っていきます。
ヨシキのジャケット一式も寝袋に入ったままだったので、私たちもついて行く形になりました。
車輪付きとはいえ、下は凸凹。凍っている部分があったり、崖道で道幅が細いところがあったり。それでもスピードを落とさずにズンズン登っていく。
救急隊って本当に力強い。
登山口に着くと、救急車が扉を開けて待っていました。
男性を担架から下ろし、登山客らが提供した防寒具が彼の身体から順々に外され、寝袋から取り出されて行きます。
「あ、次ヨシキのダウンだ…」
そう思った瞬間。
急に男性が苦しそうにもがき、救急隊員が慌てて寝袋のチャックを閉めてしまったのです。
ものすごいスピーディーに救急車は出発。
「え?俺の服は…!?」
となっているヨシキには全く見向きもせず、 勢いよく去って行きました。
あの時手を伸ばして寝袋からガッ!と取れば、ダウンは返ってきたかもしれません。
でも救急車で運ばれようとしてる人にむやみに近づくわけにもいきませんよね…
- どこの病院に行ったのか?
- どうやって服を返してもらったらいいのか?
- そもそもヨシキの服が彼の身体に巻きついたままな事を把握してるのか?
何一つ分からなかったので、とりあえずグランドキャニオンの救急係みたいな職員に説明。
予想通り気づいてませんでした(´;ω;`)
ちょっと困ったように笑いながら、どうなるか分からないけど、とりあえず連絡は入れておくねと。
えっ?これから230㎞離れたアンテロープまで行くんですけど…(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)
すぐに出発しないと、真っ暗な中100㎞/hくらいのスピードで走ることになります。怖いです。鹿とか牛とか飛び出してきますもん。
既に出発するのが1時間以上遅れているし、運ばれた病院に寄るとしてもまったくの逆方向。そもそも家族でもない人が、心肺停止した人の処置中に「あの〜僕の上着は…」なんて顔出せるわけもなく。
今日も車中泊の予定だったけど…深夜の外の気温は0℃近く。
うちの旦那は寒いとお腹壊してお尻から血が出たりするので(←今でこそ笑い話)
ダウンと上着なしでは私が恐ろしくて寝れません。
人命救助のために防寒具を提供して、その夜車で寝たら運ばれた…なんてことになったら迷惑以外の何モノでもないし😂
ということで、まずはこれからも続くグランドサークル3泊分のホテル予約したのでした。
大事なPatagoniaのダウンとウインドブレーカー、それにサングラスは今どこにあるんだろか…
とりあえず、これから気温マイナス30度のイエローナイフへオーロラ見に行くので、どこかで防寒着を手に入れなければ。
(嵐の影響でフライトがキャンセルになり結局イエローナイフには行けませんでした…)
☟その後パタゴニアにメールしてみた話
☟アメリカ旅行に行くなら当然持っておくべき「このカード」